株式会社ひらり 代表取締役

大江 亞紀香野元 義久・小野寺 友子

日本古来の叡智に根ざし
自らの中にくつろぎを見出す

HOMETalks日本古来の叡智に根ざし、自らの中にくつろぎを見出す

コーチングやワークショップを通じて、自己肯定感を高め、個人や組織の可能性を広げてきた大江亞紀香氏。最先端の脳科学を活用した「NLP心理学」のメソッドに「日本古来の智慧」を融合させた独自のアプローチを展開されています。大江氏の講座のアシスタントまで務め、自身もNLP心理学を学んできた小野寺が「野元と3人で語り合いましょう!」と声を掛け、三者の鼎談が実現しました。

NLPの第一人者として”無意識”の活用を指南

野元
実は大江さんとは共通の知人も多く、お人柄は伺っていました。いつかお会いできればと思っておりました!今日はホントに楽しみです。
大江
私も、小野寺さんから野元さんのお話はよく伺っていました。お二人は20年来のビジネスパートナーとして良好な関係を築いていらっしゃるんですよね。ステキなことだと思います。
小野寺
今日は、お二人との鼎談となり、大変嬉しく思っています。大江さんは日本におけるNLPコーチの第一人者であり、講座には経営者の方も多く参加されています。NLPの心理的・脳科学的知見に加えて、精通されている日本古来の智慧を融合させて個人や社会の変容に活かしていくことを支援されています。もともと、私は知人から大江さんの講座を紹介されたのがきっかけでしたが、今はNLP講座をお手伝いするなど、親しくさせていただいています。
野元

大江さんの講座は大人気だそうですね。NLPは、私も20年ほど前に受講したんですが、なんだか怪しい感じがして…それから距離を置いてしまったんですよね。

大江

そういう方は確かに多いんです。そもそもNLPは催眠療法の体系に基づいて人間の無意識を活用したもので、大変高い効果が得られます。本来は学習効果を高めたり、自己変革を促すために活用するものですが、武道を習った人が喧嘩に使ってしまうように間違った使い方をする人がいます…。ですので、私は、NLPを使うとき、そして教えるときも注意深く「安全な相手に提供すること」を心がけています。

大江 亞紀香氏

小野寺

私は知人に「大江さんの講座なら大丈夫」と背中を押されて受講しました。はじめにコーアクティブ®コーチに限定提供された1日講座を受けたのですが、お話にとても“納得感”がありました。コーアクティブ®コーチングのメソッドとはまた異なるアプローチでしたが、NLPがそもそものコミュニケーションの土台になると理解して、その後も継続して学ぶことにしたんです。

大江

“納得感”は、特にビジネスの世界で重要なポイントです。たとえば、コーチングの場で「そこに立って感じてみましょう」と言うことがあります。すると、なぜ突然立つのか?と怪訝に思われることがあります(笑)。そこで、NLPの知見を用いて「立つと脳神経に刺激が行き、そのことによって新しい発見が生まれることがあります。ですから、まずは立ってみて感じてみましょう」と説明すれば、「なるほど、やってみよう」という気になるでしょう。

野元

確かに理屈がわかれば素直に受け入れられてワークも進みそうです。

大江

ビジネスパーソンは言語化することや論理的であることを鍛えられているので、逆にそれを上手く活かして導けば、新たな感覚や体感にまで誘うことができます。「なぜか?」がわかると動ける人は多いので、もともと論理性に重点を置いている方や、”恐れ”があって動けなかった人ほど効果が大きいんです。

野元

まさに私たちが社名に掲げる“ブリコラージュ”です。“あるもの”である“論理志向”を活かして、“まだない体験を生んでいく”という実践ですね。

私も自分が学び続けている『関係性コーチング』や『プロセス志向心理学』では、自分が一人称で語れる体験にどっぷり浸かることと同時に、“これをクライアントにどう説明するかなぁ”という説明責任を忘れずに受講しています。これは生の現場に立ち続けているからこそ、の私たちの留意点であり知恵ですね。

大江 亞紀香氏、野元 義久・小野寺 友子

「枷」となる思考を手放して、自己肯定感を高める

野元

多くの経営者が講座に参加している理由の一端を伺えたように思います。でも、おそらくそれだけではないんでしょうね。

小野寺

なんだか、皆さん”救い”を求めて参加されている印象があります。はじめは深刻な顔をしていた人も、受講後には晴れやかな顔で帰っていかれるのを何度も目の当たりにしました。

大江

経営者は、経営者という役割について「こうあらねばならない」という自分でつくった思い込みに囚われている面も多いと思います。周囲の期待に応えようと頑張ってきて、気がつけば引くに引けない立場を務めている。期待という「枠」が人を育てることもありますが、時に「枷」にもなってしまいます。

野元

私も同族企業の経営者とお話する機会が多いのですが、子どもの頃から特殊な環境におかれ、周囲の期待に応えようと努めてきた人が多いですね。でも、ふとしたタイミングで演じることの限界を感じたり、自身の可能性の十分な発揮に疑問を持たれることがあります。

野元 義久

大江

親の生き方や世間からの刷り込みイメージが、無意識に思考に取り込まれて、自分の在り方や考え方を支配してしまっているのだと思います。そのために、本来持って生まれたその方の個性や強みを抑え込むこととなってしまい、素のままの自分を認めていないために「自己肯定感」が低下し、独自の可能性の発揮を邪魔していることが多いと感じています。まさに無意識に取り込んだ刷り込みやイメージに人生が大きく左右されてしまっている…と言っても過言ではありません。

でも、「枷」になっている思考を手放すことができれば、可能性は無限に広がり、行動も変わってきます。たとえば「土に根を張る」という制約をなくして「水の中で」トマトを育てると2万個もの実がなるそうです。人類も常態化した思考の「枷」から自らを解き放ち、自己肯定感を高めて夢を見る人がいたことで、あるいは、思考の「枷」が少ない方が大きな夢を描いたことにより、宇宙にロケットが飛ばせるようになるなどの発展をしてきたわけですよね。

野元

私も自分や自社を「俯瞰すること」をおすすめしますし、練習もしていただきます。特に、決めつけていることを「本当にそうですか?」と尋ねると、唸りながら熟考に入る人が少なくありません。緊張の中で忙しく過ごしていると、自分の思考の枠に気づかず高速回転してしまいがちですね。

小野寺

晴れやかな顔で帰る方が多いのは、自分の無意識の「枷」に気づかれて、手放して自分を自分でコントロールできると確信されているからなのでしょうね。大江さんは、相手が経営者でもたとえ新入社員でも、「個」に対してフラットにアプローチされるところが魅力的だと感じます。

大江

どんな立場であっても、一人ひとりが思考の枠から外に出ることと、自己肯定感を高めることで、楽になり、その結果として社会全体が良くなっていくと信じています。それが自分の役割であり、自分が感じる幸せの源泉となっています。

野元

組織を「人の思考の集約」と置けば、同じように組織も悩み、無意識の思考に囚われ、可能性を狭めてしまっています。

大江

今の日本企業には多いですね。かつて私がいた銀行業界はその最たるものでしょう。効率化のために、様々な仕組みや役割が定められ”安定”を目指します。ですから、そこから逸脱することは好まれません。しかし、誰かが「組織の無意識の思考」から解き放たれて行動し始め、新たな発見や成果の兆しを感じることができれば、続々と誰もが突破し、新たな可能性を追求する集団になります。多くの場合、その突破役は他業界から来た人で、業界の常識や社風という、無意識の枠組みに囚われていないからこそ、組織変革の起点となれるわけですね。

大江 亞紀香氏

野元

よく、よそ者・バカ者・若者と言いますね。組織変革という観点から言えば、そうした「異端」をいかにして動力として取り込むか、がテーマです。私たちは、始終、その動力の担い手として登場タイミングを見極めているような気がします。

日本古来の風土や文化に由来する”強み”を今に活かす

野元

大江さんのユニークさの1つは、NLPという米国から来たメソッドに、日本古来の智慧を掛け合わせて活用されているところだと思います。なぜそこに着目されるようになったのですか。

大江

コーチング、NLPともにコミュニケーションがベースです。NLPは「神経言語プログラミング」の略称です。言葉が人の心に与える影響を探求した心理学ですが、その言葉一つをとっても、英語を和訳して学び、使っていることになります。しかし、直訳された日本語で忠実にNLPをご紹介しても、それを使う人の文化背景が違うわけですから、日本語話者の方々には日本文化に適合する形にカスタマイズしてご紹介する方が、より適切ではないかと考えました。

また、私たちは、「米国から新しいものを取り入れ学ぶ”何も持たない日本人”」と思い込んでしまっている風潮も感じます。日本はギネスブックに載る世界一の長寿国であり、古来、世界中からシルクロードを通って入って来た様々な情報や文化を吸収し、融合させ、日本文化として昇華させてきたという誇れる歴史がある訳です。その上で他国から学んでいるという自覚を持つことが、自肯定感を育みつつ謙虚に学ぶことにつながるものと思います。現代日本の表面的な部分だけではなく、脈々と長い歴史の中で発展してきた精神文化、日頃の言動の根拠となる”根”の部分までを意識すれば、多少のことには揺らがない自己肯定感を持てるはずだと、多くの方々と講座で分かち合いながら実感しています。

小野寺

大江さんならではのアプローチで、エネルギーを感じるところです。もともと日本的・東洋的なことに興味をお持ちでいらっしゃったのですか。

大江

短歌のリズム感に魅力を感じ、大学時代は国文を専攻していたのですが、今も言語としての日本語を探求し続けています。最近では、言語学者の金谷武洋氏が「どんな国の人も日本語の使い手になると性格が穏やかになる」とおっしゃられていて興味深く思いました。日本に言葉が生まれる以前から穏やかな自然や風土があり、そこから生まれた言葉が文化や風習と紐づいて、人の性格や行動にもつながっています。だから、欧米からは新しいものをそのまま移植するのではなく、この国のご先祖様方がなさってこられたように「融け込ませる」のがよいのではないかと思うのです。

小野寺 友子

大江

実際、米国式メソッドでは、将来やキャリアのゴールを決めることを重視しますが、日本人は「決められない」という人も多いです。米国人は移民国家だけあり、「アメリカに行こう、西海岸まで行こう等と決めて行動してきた人」、日本人は「同じ土地で季節や自然に合わせて生きてきた人」の影響が色濃く文化に反映されています。得意な方法も、生き方や価値観も違っていて当たり前なのだから、日本人にとってのゴールは「目指すもの」という表現ではなく「望ましい状態」でいいと思うんです。

また、国際政治学者の丸山眞男先生が、西洋と日本の違いを神話から紐解かれていたのも「なるほど」と思いました。キリスト教の神は世界を「創る」、北欧は「生む」、そして日本では古事記に「高天原になりませる」と書かれているように「なる」なんです。「実がなる」、「春になる」というように、環境や外界の変化を、まず受け入れてきたことが言葉にも現れているという訳です。

野元

それは面白いですね。「日本語には主語がない」とか「受け身的表現が多い」といわれますが、「自分が何をする」という強い意志よりも、周囲との融和を重視しているからなのかもしれません。ここは日本の組織に適したリーダーシップの発揮におけるヒントです。

大江

ビジネスの場面でも、周りを見てから「自分は…」と反応するので一拍遅れるんですよね。でも、それは日本の文化や日本人の特徴であり、能力が足りないということではない。これをもっと活かす方法もあるはず。ここを世界に理解してもらう必要があるとも思います。そんなお話をすると、海外で活躍中の方もハッとされるんですよ。決して米国型リーダーシップが万能なのではありません。自国の歴史や文化に根ざした強みを一人ひとりが発揮できれば、企業や国も、もっと自信をもって世界と向き合えるように思います。

大江 亞紀香氏、野元 義久・小野寺 友子

混沌の時代に求められる日本型リーダーシップ

野元

会社単位では少しずつ変化もあり、株主偏重ではなく顧客や従業員を優先するなど、経営のあり方を見直す動きもあります。日本の企業が世界と渡り合いながら、自分たちの強みを発揮していくためには、どのようなマインドシフトが必要なのでしょうか。

大江

繰り返すようですが、やはり「自己肯定感の醸成」が鍵になると思います。日本人は「意思決定が遅い」と言われたりもしますが、かつて日本の組織運営には「任せる文化」があり、権限委譲が上手くなされていました。たとえば、日本を代表するソニーでも、かつて革新的な製品を次々と生み出してきたのは「任せる文化」のおかげと言われています。欧米型の管理経営が導入されて、事業も停滞するようになっても、あえて「設立趣意書」に立ち戻り、そのエッセンスを「感動」という言葉で全社に共有することで復活したというわけです。

野元

価値観を共有して任せるというやり方は、日本人になじみやすいんですね。原点回帰して、自分たちの強みを改めて認識することが大切なのでしょう。その意味では、効率性を重んじて情報や役割を「分ける」よりも、「分けないで共有し合う」方が日本人は強みを発揮しやすいのではないかと感じます。

大江

まさに一元論は日本のベースにある文化ですね。「こんにちは」という挨拶は、「こんにちさん=太陽」が語源と言われますが、全員が太陽だと信じていた。つまり、「あなたとわたし」と分離して捉える感覚がなかった。とするイメージと重なります。

小野寺

日本人の自己肯定感の低さは、自国を知らないことにもあるのかもしれません。むしろ、戦後やバブル後にメディアなどを通じて否定的に語られてきた言葉が、私たちの「無意識の思考」に刷り込まれているようにも思われます。

大江

それは本当に憂慮すべきことだと感じます。日本は先ほども申しました通り、世界で最も古くからある国であり、約2684年に渡って今に続いています。長寿企業が圧倒的に多いのも日本の特徴です。その奇跡的な事実に加え、縄文時代から連綿と続く平和な文化の叡智を知り、その土台の上に自分たちが生かされていると感じるだけでも、自己肯定感につながるのではないでしょうか。今や日本企業の強さは欧米で分析され、理論やメソッドとして逆輸入されています。しかし、彼らには見えず、私たちには当たり前過ぎて気付いていない強みもあるはずです。それらを改めて捉えて直し、言語化・可視化して、そっと分かち合えればと思っています。

野元

”そっと分かち合う”というのが日本的というべきか、大江さんらしいですね。ご先祖から受け継いできた自分たちの国の歴史的事実から、ニュートラルな自己肯定感を取り戻すことができれば、個人も組織ももっと強くなれるというのは福音のように思われます。

小野寺

そうですね。もっといろいろとお話を伺いたいところですが…。あえてダイレクトに「個」としての経営者・ビジネスリーダーに伝えるとしたら、どのようなメッセージになりますか。

大江

「くつろいでください」でしょうか。ぜひ、「こうあるべき」「あらねば」という無意識に持っている思考を手放し、「素のままの自分はこうなんだ」と自分を受け入れ、自分の中にくつろぐ感覚を持っていただくことをお勧めいたします。行徳哲男先生が以前「弱さを認めることが、強さなんですよ」とおっしゃっていたんですが、例えば凸凹や弱気になる面をも含めて自分なんだな、と受け入れられることが器でもあると思います。自分の中にくつろぐことができると、内省力、気づく力が高まり、自らの振る舞いや捉え方の癖を修正することができるものです。自分の中にくつろぐことができる心のゆとりは、自己肯定感の高さから生まれます。自分自身を褒めたり、他者に感謝したり、ありのままの自分を認めたりすることの積み重ねで自己肯定感は高まります。

そして、自分の「根(ルーツ)」を意識して、世代を超えて脈々と受け継がれてきた土台としての文化や智慧に繋がり直していただければと願っています。そのことが組織、個人の強みとなっていることを知ると、世界に対してのビジネスの切り口も見えてきます。欧米の価値観主導で進んで来た経済や社会構造が混沌としてきている今、東洋的、日本的なリーダーシップが潜在的に求められていると感じています。経営者の方々が人間性を磨き続けることが、もっとも社会を良い方向に変える近道だと私は信じています。

野元

歴史を学ぶことが自分をより良く学ぶことに通じるんだと確信しました。また、正しい自己肯定は他己肯定・他者尊重につながるはずです。いっそう、日本人的リーダーシップ、日本的な組織の在り方の探求を進めようと思う機会になりました。

本日はありがとうございました。

大江 亞紀香氏、野元 義久・小野寺 友子

GUEST PROFILE

大江 亞紀香(おおえ あきこ)

株式会社ひらり 代表取締役。米国CTI認定プロフェッショナル・コーチ、米国NLP協会認定トレーナー、産業カウンセラー、日本精神文化マイスターなどの資格を保有。日本銀行で広報、秘書、教育、システム管理などを担当し、在職中からNLPやコーチングを学び、2002年よりコーチング、2003年より講師を開始。2005年に独立し、傾聴による自己肯定感の向上を主軸とし、内的コミュニケーションのシフトや潜在能力開発を目的としたコーチングやセミナー・研修を実施する。2006年、人の本質から人生を創造する支援をするべく「コア・クリエーションズ」を設立、さらに人生の変革は軽やかに起こさせるものという思いから活動主体を「ひらり」に変更。古来から連綿と続く日本の知恵を現代に活かすことを意識し、活動を行っている。

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